研究内容


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植物の光合成光化学系II反応中心における電荷再結合機構の解明

背景
  植物における光合成において光エネルギーを行う重要な機能単位として、光化学系(Photosystem,PS)と呼ばれるPSTおよびPSUのタンパク質色素分子の複合体が存在する。各光化学系には、光を捕集するアンテナ部とその励起エネルギーで電荷分離状態を形成する反応中心部(reaction center)があり、その両者が密接に関係している。PSUが光励起されると、経路選択的に高効率の電子移動が起こる。この系において電子受容体である。キノンA(QA)を除去し後続の電子移動を抑制したPSU RCにおいては、クロロフィル(PA)とフェオフィチン(PheoA)とが不対電子を持った初期電荷分離状態(PA・+PheoA・−)の生成後、電荷再結合過程を経てアクセサリークロロフィル(ChlA)の励起三重項状態が生成されると考えられている。しかしこの電荷分離状態を実験的に観測した例はない。



成果
  光合成光化学系II反応中心において、初期電荷分離状態からの三重項電荷再結合速度を決定することができた。得られた非常に大きな再結合速度定数から、アクセサリークロロフィル励起三重項状態への電荷再結合過程は、初期に生成したフェオフェチン?クロロフィル長距離電荷分離状態から直接的に電子と正孔がアクセサリークロロフィルへと同時に移動することによって起こることが示唆されている。




現在と今後の展開
  ホウレン草から抽出した光合成光化学系II反応中心においては、三重項電荷再結合の経路及び電子的相互作用が明らかになった。これらのデータを踏まえ、初期電荷分離状態からアクセサリークロロフィル励起三重項状態へと至る電子伝達機能が明らかになった。今後は初期電荷分離状態の観測・解析により、電荷分離状態の立体構造解析を行うことによって、植物光合成系における電子伝達機構をより具体的に明らかにしていく予定である。


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